創業230年の老舗茶商・主人が語る茶筌づくりの極意 「消耗品だからこそ、機能性を追求し、完璧な美を」 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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創業230年の老舗茶商・主人が語る茶筌づくりの極意 「消耗品だからこそ、機能性を追求し、完璧な美を」

第1回高山茶筌(奈良県生駒市) 竹茗堂(ちくめいどう)24代目・久保左文さん

「無駄というのは非常に大事なことなんです」

「茶筌はみな同じだと思っていたけれど、いろんな種類があるんですね。1本1本、それぞれ顏が違うというか、性格まで違うように見えます」とKさん。

 茶道のことはもちろん知っていましたが、茶筌にこれほどたくさんの種類があるとは驚きました。
左文 茶筌は全部で120種類ぐらいあるんです。表千家、裏千家、武者小路千家という流派や用途によって、竹の種類、穂の形状が変わり、穂の数などにも違いがあります。茶道具のなかでも、茶筌は消耗品です。使われていくと醜くなって捨てられる。それでも茶筌がなければお茶はたてられません。縁の下の力持ちなんです。

 これほど精巧なものなのに、もったいないですね。
左文 茶筌作りは8工程に分かれていて、1本の竹から、皮をとり、16に割って、内側の肉の部分を取り除き、その一つ一つをまた手で10に割き、さらに削り、薄くします。一番薄いところは100分の3ミリくらいになるまで削ります。それをしごいて曲げていき、編み上げていくんですよ。

 ミクロンの世界ですね。
左文 茶筌は基本の形や寸法が決まっています。それが違うと使う人が困ってしまいますから。

 とはいえ、自然の竹はすべてが同じわけではない。
左文 そこが難しいところです。だからこそ、美術品のように綺麗に仕上げたい。仕上げたところで一度お湯につければ、穂は伸びたりして乱れてしまう。だから、綺麗に仕上げることはある種“無駄”なことかもしれません。でも、無駄を承知で綺麗なものを作る。無駄というのも非常に大事なことなんです。

 茶筌の美しさやそれを作る想いはまさにアートだと思います。でも茶筌は人が使う実用品でもあるわけですね。
左文 最初から完成まで真心を込めて、使う人の身になって作る。そうすれば結果として、使いやすくて長持ちする、良い品物が完成すると思っています。手に取った方に「美しいな、使ってみたい」と思って頂けるような茶筌を作ることが、我々に課せられた責務だと考えています。

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寺野 典子

てらの のりこ

1965年兵庫県生まれ。ライター・編集者。音楽誌や一般誌などで仕事をしたのち、92年からJリーグ、日本代表を取材。「Number」「サッカーダイジェスト」など多くの雑誌に寄稿する。著作「未来は僕らの手のなか」「未完成 ジュビロ磐田の戦い」「楽しむことは楽じゃない」ほか。日本を代表するサッカー選手たち(中村俊輔、内田篤人、長友佑都ら)のインタビュー集「突破論。」のほか中村俊輔選手や長友佑都選手の書籍の構成なども務める。


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